2008年6月定例県議会
6月23日(月)11:05〜12:05
濱田大造一般質問原稿

1、川辺川ダム建設について
2、第三セクターの連結決算を踏まえての経営改善について
(1)天草エアラインについて
(2)フィッシャリーナ天草について
(3)肥薩おれんじ鉄道について
3、中高一貫教育校の設立について
4、ふるさと納税の使い道について(要望)

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民主党の熊本県議会議員・熊本市選出の濱田大造でございます。会派は民主・県民クラブです。本日は、先輩・同僚議員各位におかれましては、2回目の一般質問の機会を与えて頂きまして大変感謝致します。
少数野党として精一杯頑張りますので、宜しくお願い申し上げます。

1、川辺川ダム建設について:県の財政面からの質問

民主党は、川辺川ダム建設に関しては終始一貫して反対を表明しております。

国営事業である【川辺川ダム】を造らないという選択は、既存の価値観を根底から覆すという意味合いが大きいと考えております。

この国では、これまで、大小併せて約3000近くのダム建設が行われてきました。ダム建設の負の側面としては、全国各地で環境問題などを多少なりとも引き起こしてきたことが指摘できます。これは間違いのない事実だと思います。環境破壊は山や川にとどまらず、結果として海を汚し、生態系を破壊してきた。また、全国の自治体で悪化している財政問題とも密接に絡んでいる。熊本県でも大蘇ダムでは事業費の拡大や諸問題が指摘されております。また、ダム完成以降もダムを維持するのに経費が掛かる。また、各自治体が当初見込んだよりもダムが上手く利用されていないという現実も事実としてあります。

しかし、ダム建設は、負の側面ばかりではございません。もちろん優れた面も沢山あります。ダム建設という大型公共事業を通して、日本各地に仕事をもたらし、地方の雇用を支えてきたという側面もあります。そしてダム建設の根底には、住民が安心して暮らせる治水効果、生活用水の確保、農業用水の確保、クリーンエネルギーとしての水力発電、または砂防効果といった優れた面も沢山あったのだと思います。

全国に散らばる大小3000近くのダムを科学的な見地に基づき、そして一応のところ、そこに住む住民の立場からダムを造ってきたのが、ご承知の通り、国土交通省つまり国であったのです。

国営事業である【川辺川ダム】を造らないという選択は、だからこそ、既存の価値観を根底から覆すという意味合いが大きく、造らないということは、熊本県が、日本国つまり【お上】に楯突くということを意味します。また、国営事業のダム建設を土壇場で中止した前例をこの国は持っておりません。だからこそ、反対するには途方もないエネルギーが要る。

民主党はそれでも反対しております。反対するということは、つまり既存の価値観を変えるということです。

既存の価値観を変えるとは、近代科学の力・科学万能主義を今一度、考え直すということです。ダムの力で自然を抑え込む、洪水を防ぐといった従来の考え方ではなくて、自然と人間が【共生】する試みとも言えます。洪水が起きないように自然の力を再生させる。森林の保水力を活かし、または川底を下げて川本来の機能を高める。極力、自然を未来に残すということ。また、地道な自然との共生の道を通して地元に雇用の場を創出する。そういった、つまり自然と人間との共生の考え方を模索すること。それが既存の価値観を変えることだと言えます。

議員の皆様もご承知の通り、この価値観を変えていくことが大変難しいことなのです。本当に建設反対の立場つまり民主党を含めて諸団体が提案しておりますその代替案で本当に大丈夫なのか?治水効果があるのか?住民を守れるのか?国土交通省つまり国の威信・知見を覆せるほどの科学的な根拠に基づいているのか?に関しては、民主党の私自身も、実は、はなはだ疑問もございます。

ただ、ひとつ言えることは、清流川辺川は日本に残された最後の清流のひとつであること。川辺川とそこに住む住民は過去何千年にわたり川と共に暮らしてきたという事実です。すでに共生してきたとも言えます。これからは、さらに一歩、踏み込んだ共生のあり方を考えていくべき時代に入っている。それに加え、今世紀は、環境の世紀と言われている。ダムを造らないという選択は、いささかも、恥ではない時代へと突入している。共生の考え方は時代を先取りしているとも言えます。

そして、私は、熊本県議会議員の1人として、ここで熊本県の現実に立ち返るべきだと考えます。熊本の現実とは、熊本県の逼迫した財政問題のことです。財政の面から川辺川ダムを考えてみる。これまでのように、安易に公共事業を進めてしまったら、取り返しのつかないことが起きる可能性がある。つまりダム建設を熊本県の財政面から検証してみる必要があると考えます。

ここで質問です。

ご承知の通り、川辺川ダム計画は、昭和41年に旧建設省が計画を発表して以来、実に42年間もの長き時間が経過しております。その間、少なくとも2回の建設費見直しが行われてきました。昭和51年の最初の基本計画では、川辺川ダム建設の総事業費は350億円でした。これが昭和59年には1回目の変更として1130億円に増額され、そして平成10年には2回目の変更が行われ、総事業費が2650億円へと再度増額されました。

大型公共事業の総事業費が歯止めなきままに増大する典型例と言えます。最後の総事業費変更から10年が経ちます。そして、現在、2650億円の総事業費のうち、既に2075億円が川辺川ダム周辺整備に使われております。つまり、総事業費の残りの金額は575億円ということになります。

ちなみに、ダムに関する残りの事業は、本体着工と橋の建設費そして若干の周辺整備が残っているくらいです。

しかし平成16年9月に国土交通省は3回目の総事業費変更を事実上認めております。それによると事業費はさらに増大され3300億円となっています。これは周知の事実です。しかし、県の説明によると、未だに県は平成10年に発表された総事業費2650億円を基本としてダム計画を遂行している。

こんなことが許されるのでしょうか。ずさんな計画・甘い見通しと言われても仕方がない状態と言えます。皆さんはどのようにお感じでしょうか?

2650億円のままだと、県つまり県民の負担額は581億円となります。しかし、3300億円で計算し直すと、県民の負担は735億円になります。そして平成20年度以降の実質負担額は75億円から160億円へと膨らんでしまう。

どちらを総事業費を信じれば良いのでしょうか、また、ダム完成後の維持管理費も2650億円の場合だと年間13億円で、その内、県負担額は約5.9億円となっておりますが、3300億円の場合だとどうなるのでしょうか?

以上を熊本県ダム担当理事にお尋ねします。併せて、ダムが県財政へ与える影響に関して総務部長にお尋ね致します。どこまでの費用負担増額になら、県財政は耐えられるのか、お知らせ下さい。

(2人の部長が答弁)

繰り返しになりますが、川辺川ダム建設は国の直轄事業です。その国から、「総事業費がもっと掛かることになりました」と言われて、県が「ハイそうですか」と言ってしまったら、県民の理解は決して得られないと考えます。また、平成16年に国土交通省が事実上総事業費の総額を3300億円と認めてから、既に4年が経過しております。その間、ご承知の通り、ありとあらゆる素材または燃料が高騰しております。また、荒瀬ダムの問題も、県のコスト意識の低さが起因しており、いま、まさに、県の姿勢が問われております。

もし知事が9月に建設反対を表明するならば、そこにあるのは科学的な結果に依拠するものではなく、あくまで知事の【政治決断】だけだと考えております。知事が政治家として孤独な決断、何を言われようと今後何が起ころうと職責を賭して表明する命懸けの【政治決断】となります。

蒲島知事は、折角のマニュフェスト選挙だったのに関わらず、いちばん揉めてきたダム問題を曖昧にしてしまった。それが残念だと思っております。県民のダムに関する意識としては、どの調査結果でも7割を超える県民がダムに反対となっております。

民意はどこにあるのか・・・9月の知事の英断を希望します。

2、第三セクターの連結決算を踏まえての経営改善について

ご承知の通り、地方公共団体財政健全化法が平成21年4月から本格運用されます。本年9月からは第三セクターを含めた計算を行って将来負担比率を公表することになります。解かりやすく言うと、第三セクターも連結の対象になるということです。こうした中で、今後より一層、第三セクターの経営改善、改革が求められてくると思います。そこで本県の第三セクターの状況をあらためて調べてみようと考えた次第です。

本県の県出資団体への取組みは早かったと言えます。平成11年度に『熊本県出資団体等の見直しに関する方策等』を定め、県の関与の見直しが進められました。平成17年3月には『県出資団体等に対する県の関与に関する指針』が策定され、県が出資しております(当時の)121団体のうち、県の出資比率が25%以上であり、かつ出資順位が1位の団体、そして県との関係が特に密接で、運営指導を行う必要があるとみなされる団体の52団体を見直し対象と規定しました。さらに平成18年3月には、県は、その52団体のうち、43団体については『県出資団体等に対する県の関与見直し実行計画』を策定し、残り9団体については経営状況等に問題なしと考えました。

その実行計画によると、平成17年度から21年度までに43団体のうち5団体を削減するとあります。(財)熊本開発研究センター、(財)熊本県国民年金福祉協会、(財)熊本県下水道公社、(財)熊本県土地開発公社の削減が、既に実行済みとなっております。また、その期間中に(財)グランメッセ熊本、(財)くまもと緑の財団も削減されており、合計6つの出資団体が削減済みとなっております。またその見直し期間中に県職員の派遣削減にも努めています。第三セクターへの県職員の派遣を84人から最終的には31人まで減らす。つまり53人の引き上げという計画で、現在、これもほぼ達成しています。また県費支出の削減も試みている。平成17年から5年間で累計87億円の削減に努める計画で、平成16年度は年間52.5億円あった第三セクターへの支出が、平成20年には単年度で22億円減の30.5億円まで減少し、削減額の累計は69億円となっています。

以上のように、これまでに本県は、ほとんど乾ききった雑巾を絞るような形で、あらゆる面でいわゆる第三セクターの見直し努力をしてきたとも言えます。

ただ、本県の職員の努力だけではどうしようもない問題も起こっています。これがこれから述べます赤字団体の問題です。

見直し対象となりました43団体(現在37団体)のうち、毎年のように恒常的に赤字・累積欠損を抱えている団体が5つあります。

今回の質問に際してそれらの団体を視察に訪れました。

事業によっては、赤字であっても、赤字解消に向けた事業の見直し方針を持っており、特に問題なしと思える団体もありました。(財)熊本県農業公社がこれにあたります。

早急に方向性を示し抜本的な解決を急がなくてはならない団体つまり第三セクターは、3つあると考えます。天草エアライン(株)、フィッシャリーナ天草(株)、肥薩おれんじ鉄道(株)がこれに当たります。今回の視察で、この3社の現場で働かれているプロパー社員の皆様から、様々なお話をお聴きすることができたと思います。

(1)天草エアラインについて

まず、天草エアラインです。設立は平成10年10月12日。実際の就航は平成12年からです。資本金は4億9900万円。熊本県は2億6600万円・53.3%の出資をしており、もちろん筆頭株主となっております。現在、県職員の派遣はありません。従業員は社長以下49名。カナダ ボンバルディア製の39人乗りの28億円の航空機を1機所有。空港の建設費として約104億円(空港99億円、空港設備5億円)が投入されました。

天草エアラインの職員の皆様は本当に努力されていると感じました。1機の航空機が驚くほど飛び回っております。天草〜福岡を日に4便、天草〜熊本を日に2便、熊本〜松山を日に1便。日程表を見ますと、毎日限界まで飛んでいるのが分かります。また、熊本〜松山線は廃止して9月からは熊本〜神戸線に切り替える計画もあります。

しかし、天草エアラインの企業努力も空しく恒常的な赤字が続いております。平成19年度の搭乗率は48.6%、利用者数は82、299人で減少傾向にあります。

天草エアラインは、平成12年度から18年度までで、既に累積赤字は3億5百45万8千円に達しています。このまま行くと、数年以内に債務超過に陥る可能性が高いと言えます。

全国の自治体が抱える第三セクターの典型例とも言えます。空港を造るのに莫大な投資をして、結果、採算がとれない。

全国の航空会社の中で1機のみで運行している航空会社は天草エアラインだけです。天草空港には航空機の2機所有に備えて2つのバースが整備されています。現場は2機所有を望んでいるわけですが、購入の予定は立っていない。また1機のみの運行ですので、機体整備のために毎年のように最長で連続25日間の運休日がある。その間、運賃収入はないわけです。また、ボンバルディア製の同型機は、既に生産中止になっておりますので、将来的にもう1機買うにしても、別の種類の飛行機を買うことになる。すると整備用の機材をほぼすべて買い直す必要がある。つまり部品の使い回しができないことを意味します。また、39席しか座席がないので、観光に力を入れすぎると、公共交通としての役割が果たせなくなる。そして、意外なことに天草エアラインには営業担当者は事実上1人しかいません。通常、航空会社は営業に力を入れます。就航先の都市には担当者が張り付き、在住して各方面にその会社の営業を仕掛ける。しかし、それもこの8年間できていない。またジェット燃料の高騰の悩みもある。

まだまだ、現場の悩みそして問題点はあるのですが、この第三セクターの問題の本質は、【政策に明確な方向性がなかった】ことにあると思います。

つまり赤字が続き、将来的に県民に負担を掛けることになっても、公共交通としての役割に重きをおくのか、もしくは赤字を解消すべく、攻めの経営つまり機体・人員を含めて本格的な観光事業の基本軸として天草エアラインを位置づけるのか?

これまで、その基本方針が非常に曖昧でありました。

基本方針が曖昧であり続ける限り、決して赤字問題の解消にはならないと言えます。いま、まさに明確なる方向性を示す時期にあたると思います。

これについて県はどう考えているのか、地域振興部長にお尋ね致します。

(2)フィッシャリーナ天草について

次に、フィッシャリーナ天草に関してです。
フィッシャリーナ天草は、レジャー用のボート・ヨットの港を管理運営する第三セクターとして平成5年に設立されました。この計画自体は、バブルの真っ最中に計画されたと言えます。資本金は3億3500万円、そのうち本県は約52%にあたる1億7500万円を出資しており筆頭株主となっております。

この第三セクターが使用しております港自体は県の所有物となっており、県は樋合漁港利用調整施設への設備投資として、これまで国からの補助金(10億円)を含めて累計で約38億円(38億61万5千円)を投入しております。そして、その港を管理する第三セクターとしてフィッシャリーナ天草があり、第三セクター事業として、約6億円(612,560千円)を投入しております。その累積赤字は平成19年決算で約2億円(191,755千円)を見込んでおります。
県内には、登録してあるプレジャーボート(ボート・ヨット)の数は平成18年度末で9644艇あります。そして県内には、プレジャーボート用の港が、20箇所あります。その内、県が関与しているのはフィッシャリーナ天草と三角波多マリーナの2港となっております。また、プレジャーボートの保管場所としては、漁港も使用されてきました。

ご承知の通り、レジャー用のヨットまたはボート、つまりプレジャーボートは、普通の人は所有できるはずがありません。フィッシャリーナ天草は、まさしく富裕層向けに造られた第三セクターと言っても良いかと思います。

県が第三セクターとしてフィッシャリーナ天草に関与し続ける限り、今後も補助金その他の出費が発生すると考えます。完全民営化への道筋を決断すべき時期にさしかかっていると感じます。県は、このフィッシャリーナ天草をどのように考えているのか、地域振興部長にお尋ね致します。

(部長答弁)

(3)肥薩おれんじ鉄道について

次に肥薩おれんじ鉄道に関してです。
この第三セクターに関しては、論ずるには時間が掛かり過ぎ、この場では、現場からの県に対する単刀直入な要望を取り入れ、質問へと変えさせて頂きたいと思います。

肥薩おれんじ鉄道は、九州新幹線鹿児島ルート新八代・鹿児島中央駅間の開業に伴い、JR九州から経営分離された第三セクターです。資本金は15億6千万円。本県は鹿児島県と同じ39.8%の6億2千50万円を出資しております。従業員91人。経営区間は八代駅から鹿児島県川内(せんだい)駅。116.9キロに28駅があります。平成16年3月13日開業。

熊本・鹿児島両県は、会社設立にあたり、平成14年度に経営基本計画を策定し、その中では、開業後9年間は減価償却前黒字との経営見通しを立てておりました。しかし、開業2年目・平成17年から現在に至るまで減価償却前赤字となっております。累積赤字はこの3年間で既に5億2840万8694円に達しております(平成19年3月31日)。残念ながら黒字の予定が立たない状態にあります。

赤字の原因としては、その区間はもともと赤字の路線であったこと、または、JRが運行しておりました平成12年度に比べて利用者が68%まで減少し平成18年度の利用者数は168万人まで予想以上に落ち込んだこと等が考えられます。

肥薩おれんじ鉄道に関して以下のことが見えてきました。

先ず、予想以上に利用者数は減少の一途をたどり、様々な企業努力をしているが、それにも限界があること。そして、現在、長期的な展望を描くことが出来ない状況に陥っていることが指摘できます。

肥薩おれんじ鉄道は、移管の条件として、JR九州から10年間の人的・技術的支援を頂くことになっております。しかし、同じ新幹線でも、長崎新幹線では、佐賀・長崎県はJR九州から20年間の支援条件を得ました。随分と隔たりがあります。つまり2倍の隔たりがある。交渉時期、考え方はもちろん違うのは理解できますが、あまりにも条件が違うように思えます。

現在、肥薩おれんじ鉄道では、会社としての見通しが効かず、プロパー社員も未だ1人も雇えていない状態にあります。また、人口減少の時代、自ずと利用客の減少に歯止めが掛らず、6年後にはJR九州からの人的・技術的支援も打ち切られ、このまま行くならば、路線の存続自体に関わってきます。

肥薩おれんじ鉄道は、公共交通機関としての使命を果たす必要があり、赤字を解消するためには、長期的な展望が必要となります。長期的な展望を開くためには、いま、政治力を発揮する時期にあたると考えます。政治力とは、熊本県が、再度、JR九州そして鹿児島県と長期的な計画を立て直すということを意味します。また、現場からは、無理を承知でなんとかならないでしょうかとの要望も頂いております。

これに関して地域振興部長にお尋ね致します。県は肥薩おれんじ鉄道をどのようにとらえているのか、さらにJR九州に対して再度の条件交渉をする予定はあるのかお聴きします。

(部長答弁)

肥薩おれんじ鉄道に関しては、もちろんあらゆる手段を講じて、経営健全化を試みる必要があります。また、国土交通省が提唱しております鉄道の上下分離方式をなんとか導入できないのか検討する価値があると考えております。まだまだ条件面で難しいようでありますが・・・

第三セクターは、特にここ20年の間に様々な団体が設立されてきました。各団体の設立の経緯を考えるに、時代の流れを感じます。県民は何を望んでいるのか、何が本当に求められている政策なのか、今一度再考する時期にあたると考えます。

3、中高一貫教育校の設立について

教育者・政治家としての蒲島知事にお聴きしたいと考えております。

蒲島知事はマニフェストの中で政令指定都市実現を謳われております。このまま行くならば、この2年以内に熊本市の政令指定都市昇格が実現することになります。もちろんその実現のためには、解決しなければならない様々な課題・問題がございます。

教育の偏在を解消することも、重要な課題のうちのひとつだと考えます。

「熊本県は残念ながら教育県ではなくなってしまった」、と憂える声を良く耳にします。これを裏付けるものとして大学等進学率(大学・短大)があります。現在、大学等進学率の全国平均が51.2%に達しております。本県は平成18年度は、進学率37.9%の45位。平成19年度は38.9%44位でした。九州では下から2番目の結果。もちろんこの結果に対する反論を言う方もいますが、全国同じ指標を使い、同じ基準で順位が出ております。熊本県の県内事情など数字には出ません。全国の日本人は、この結果を見て、「熊本県は教育県ではない」と判断します。また、県民の平均所得は全国38位であることを考慮するならば、最低でも進学率は所得順位と同じくらいであっても良いと考えられます。また、蒲島知事が教鞭を執られていた東京大学をはじめとする、一般的に難関と言われる大学にも熊本市内の一部の高校を除いては、ほとんど通らない状態です。

しかし、県内の子供を持つ親の教育熱が低いのかというとそうでもありません。平成19年10月に総務省が行った調査によりますと、熊本市で中学生を持つ親は1世帯あたり中学校補習教育費つまり学習塾の塾代として毎月33,100円を払っております。ちなみに中学生の塾代の全国平均が20,140円。全国の大都市平均が24,680円。そして九州各県の県庁所在地及び北九州市の平均が18,550円。

熊本市の平均33,100円は、福岡市の27,960円を抜いて九州では断トツの1位となっています。少子化が叫ばれている中、熊本市内で塾は大流行という状況にあります。

つまり教育に関して、熊本市のいびつな一極集中がすでにあるわけです。熊本市の政令指定都市昇格後は、さらに教育の一極集中、偏在が加速するのではないかと危惧されています。

私はなにも、進学率を上げろと言っているわけではございません。教育の偏在をなくすためには、いま何を成すべきかを考えたいのです。

現在、県内には61校の県立高校があります。一昨年から再編計画が進められてきましたが、蒲島知事はマニフェストで一応、再編計画の凍結を謳われました。まだ議論の過程でありますが、再編計画では61校の県立高校を最終的には51校まで再編する。そして、熊本市への教育の偏在を解消すべく、県は目玉政策として中高一貫教育を掲げました。

そして平成21年から宇土高校と八代高校に併設型の県立中学を設立する。さらに平成23〜24年には県北に位置する玉名高校にも中高一貫校を設立する予定となっています。

しかし残念ながら、県教育委員会からは県議会に対してもまたは県民に対しても、何故、中高一貫校が3校だけにとどまるのか、またそれらの高校が何故選ばれたのかに関して、その本当の理由が広く理解されてないように思われます。
ご承知の通り平成17年度入試から県内県立普通高校の入試が大きく変わりました。変更されて今年で4年目になります。つまり、現在、前期と後期に分けて試験が行なわれています。前期ではコースを除く普通科において最大で定員の20%まで合格者を出し、残りは後期試験の合格者となります。そして、この高校入試改革が県民にはとても不評となっております。

これは考えれば当然と言えます。多感な時期の15歳の中学生が、卒業前に、希望していた県立高校に最大で2回も落ちる。また幸運なことにも県立高校に合格した生徒の中でも、同じ同期となった生徒間で、「あいつは前期合格で俺はどうせ後期合格」といった、いびつな目に見えない関係ができる。これは多感な時期の人格形成にかなりの影響が出る可能性が高いと言えます。実際はどうなのかは、誰も検証できていないのですが、少なくとも私はそう考えます。

現在、熊本県には13校の地域重点校があります。私は、熊本県が熊本県たるゆえんとしては、人材の育成・教育にこそ力を入れるべきであると考えております。また、本県を全国に誇る教育県にすべきだと考えます。そのためには、たとえ、県内のどの地域で生れたとしても最高の学ぶ場所があることが必要になります。また、県としては最高の学問の場所を県民に提示する義務があり、県民は選ぶ権利があると考えております。

重点校13校のすべてに中高一貫の道を開く道はないのか、また、いびつな前期・後期入試をやめて、前期入試分に相当する人数を県立中学に割り当てる。予算がないなら、高校との併設型の県立中学ではなく、既存の中学校の施設を活用する。または、13校すべてに導入できないならば、やる気のある、中高一貫教育校の設立を希望する自治体と県が組んで、その設立に取り組む。そういった道を模索すべきだと考えております。

そして県立中学設立にあたっては、学力試験は必要ないと考えます。ただ、「勉強したい若者集まれ」で十分だと思います。もちろん保護者の理解、地域自治体の理解が必要になります。

いま、本県には、本気で教育改革に取り組むというメッセージが必要と考えます。私は決して大学等進学率を上げろとか、難関大学の進学者を増やせといったことを求めているわけではございません。そんなことは教育の本分ではあり得ず、県民も望んではないと考えます。ただ、最高の学問の場所・学問環境を県民に提示する義務があると考えます。そして結果は後から付いてくると考えます。

これが実行できるのは、教育に理解のある蒲島知事だけだろうと考えます。
教育長に中高一貫教育校に対する答弁をお願い致します。また蒲島知事に中高一貫教育校に対するご感想をお聴きしたく考えております。
(教育長答弁)
(知事答弁)

4、 ふるさと納税の使い道についての要望

最後になりましたが、4月から始まりました、ふるさと納税の使い道についての要望をしたいと考えております。

本県では、社会状況を反映して、授業料を払えない高校生が増える傾向にあります。
本県におきます平成19年度の県内私立高校の授業料の平均月額は21,691円で、これは県立高校の授業料9,700円と比較すると2.24倍となっています。

繰り返しになりますが、授業料を払えない生徒が県立・私立を問わず増えております。平成20年3月31日現在で61校の県立高校で、9.62%にあたる3441人の生徒が授業料減免措置を受け、私立高校では5.7%にあたる920人が、県が補助対象としている授業料の減免措置を受けている状況です。もちろん、その中には、経済的理由により退学の道を選ばざるを得ない生徒もおります。

子供は親を選べません。本当に困っている若者達に未来を開く手段として、是非、ふるさと納税の有効活用先のひとつとして、新しい奨学金の設立を要望します。

ご承知の通り、日本に存在する奨学金のほとんどが、将来的な返済義務があります。既存の制度、熊本県育英資金にも返済義務があります。知事もご承知の通り、世界各国では、奨学金に返済義務がないのが普通であります。ですから、学生達が返済する必要のない【熊本県ふるさと奨学金】(仮名称)の新設を要望したいと考えます。もちろんその選考基準は厳しくても良いと考えます。その代わり、本当に困っている学びたいと希望する若者に未来を提示すること。それがふるさと納税にご理解して頂いた納税者の皆様に報いることになろうかとも考えます。
是非、ご検討のほど宜しくお願い致します。

すべての政策にはメッセージが必要と考えております。
皆様と共に良い熊本を創って参りたいと考えております。これで濱田の質問を終了させて頂きます。ご清聴ありがとうございました。

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以下はそれぞれの質問に関する答弁骨子です。

問1
答弁骨子・理事
(川辺川ダム総合対策課・河川課)

(問1)川辺川ダム建設について

(答)川辺川ダムは、特定多目的ダム法に基づき策定されたダム基本計画に位置づけられており、平成10年の計画変更後の事業費は、2,650億円であります。
  一方、3,300億円という数字は、平成16年に国土交通省が試算したものであり、当時、国土交通省は、「不確定要素が多く精緻な試算は困難で、今後変わることがある」と説明しています。
  しかし、その後、国土交通省は、事業費2,650億円を定めたダム基本計画のもととなる従前の球磨川水系工事実施基本計画に代わり、昨年5月、球磨川水系河川整備基本方針を決定しました。今後、河川整備計画を策定した上で、ダム基本計画を見直すとのことです。
  また、川辺川ダムの目的である「かんがい」、「発電」についても、それぞれの事業者が撤退の意向を示しているといった状況もあります。
  このように、ダムの事業費は、ダムの事業計画が策定された時点で確定するものであります。
  また、維持管理費の県負担分についてですが、事業費が2,650億円の場合は、国土交通省が示した維持管理費をもとに県が試算しました。
  しかし、事業費が3,300億円の場合は、国土交通省が維持管理費を示しておらず、また、「かんがい」や「発電」がダム目的から外れる可能性がある中で、ダムの形式や管理方法が大きく変わってくることも予想されることから、県が試算できる状況にありません。
  ただ、事業費のみが3,300億円に増加し、維持管理費も事業費に比例して増加すると仮定すれば、県負担分は約7億円程度になるものと思われます。

答弁骨子・総務部長[財政課・川辺川ダム総合対策課]

(問1)川辺川ダム建設について

(答)本県の財政は、このままでは平成22年度にも財政再生団体に転落しかねない危機的な状況。そのため、歳入・歳出両面における徹底した見直しを行った上で、来年2月までに「熊本県財政再建戦略」を策定する。
  今後、策定に向けた見直し作業の中で、公共事業などの取扱いについても、その総額の水準や個別事業の推進のあり方などについて、抜本的な見直しに取り組む。

 川辺川ダム事業については、ダムの事業費が確定していないこの段階において、県財政に与える影響について言及することは困難。

 いずれにしても、どのような事業であれ、厳しい財政状況の中、すべての事業を総合的に調整した上で、必要と判断した事業については、しっかりと取り組む必要があると考えている。

[交通対策総室][地域振興部長答弁]

問2(1)天草エアラインについて

【答弁骨子】
  @天草エアラインは、高速交通ネットワークの空白地域であった天草地域の地理的ハンディキャップの解消を図るための高速交通機関として設立され、就航以来、福岡・熊本都市圏との人的交流や経済交流の拡大に大きな役割を果たしている。A約8万人いる利用者のうち地元住民は4割、ビジネス客が4割で、住民生活や経済活動に不可欠な交通インフラとなっている。また、福岡等大都市圏からの観光客誘致等観光振興にも貢献し、地元では、大きな期待を寄せている。
  B経営面では、機体の整備費用が年々増加し、燃料費も高騰するなど大変厳しい環境におかれており、県と地元市町が連携し機材維持の支援を行っている。
C県としては、現在も天草地域に欠かせない交通手段と認識し、厳しい経営環境の中でも、天草地域の活力を支える社会基盤として持続可能な経営が維持されるよう、本年度は、総合的な検討を行って参りたい。

(地域振興部長)

(問2)第三セクターの連結決算を踏まえての経営改善について
(2)フィッシャリーナ天草について

【答弁骨子】
○マリーナの適切な管理と地域振興を目指して設立されたが、マリーナの管理運営自体は、採算が合えば民間事業者でも可能。

○県からの役員を減らすなど人的関与を縮小するとともに、減価償却前黒字を達成するなど、経営的にも安定してきたところ。

○更に経営改善を促すとともに、他の出資者とも協議を重ねながら、民営化も視野に入れた取組みを進める。

答弁骨子
[交通対策総室][地域振興部長答弁]

(問2)第三セクターの連結決算を踏まえての経営改善について
(3)肥薩おれんじ鉄道について

○答弁骨子
  ・肥薩おれんじ鉄道は、年間約170万人が利用する基幹的交通手段として重要な役割を担っていると認識している。
  ・会社の経営状況は、開業2年目に減価償却前損益で赤字を計上するなど、厳しい状況となっており、会社では懸命な経営改善努力を行い、県や地元沿線自治体も連携して利用促進に努めており、平成19年度は、初めて旅客収入が前年度を上回る見込みとなった。
  ・しかし、沿線人口の減少など肥薩おれんじ鉄道を取り巻く環境が今後も厳しい状況であることは、御指摘のとおり。これまで、県では沿線自治体とともに、国・JRに対して、並行在来線に対する抜本的な支援策の確立を要望してきた。このような取組みもあり、本年2月には、熊本・鹿児島両県選出の国会議員による議員連盟が設立され、肥薩おれんじ鉄道の維持存続に向けた活動を展開。さらに、国による整備新幹線の建設スキームの見直しの中で、並行在来線への支援策が検討されている。
  ・今後も、肥薩おれんじ鉄道が将来にわたり安定的な運行を維持できるよう、引き続き国、JRなどに対し、強力に要望して参る。  

 

3 中高一貫教育校の設立について

【答弁骨子】
(教育長)
・本県初の併設型中高一貫教育校は、県立高校の再編整備における特色ある学校づくりの一環である。
  熊本市内の高校への集中を緩和し、地域の高校を強化するために、「県北」「県央」「県南」の各学区ごとに拠点となる、より魅力的な学校とすることを目指している。

・併設型中高一貫教育校では、6年間にわたる計画的・継続的な指導により、効果的な一貫教育が可能となる。また、生徒の個性を伸ばし、幅広い年齢集団による活動により、社会性や豊かな人間性を育成することができるという利点がある。

・来年4月開校に向けて、宇土高校及び八代高校に設置するための関係条例や補正予算を今定例会に提案している。また、玉名高校への導入も、基本計画において示している。
   まずは、この3校への導入の成果や課題をしっかりと見極めることが大事であり、その後の議論の展開につなげていきたいと考えている。

(知事)
・教育に携わった経験を持つ者として、教育の重要性は十分認識している。

・本県初の併設型中高一貫教育校には、地域の学校がより魅力的になり、これまでの学校にはない特色を持たせることで、私が考える「夢を持てる教育」につながる可能性があると期待している。

・基本計画の大きな柱のひとつである中高一貫教育校の導入については、様々な意見を集約しながら、三つの学区のそれぞれの核となる学校を目指して決定されたと聞いている。

・教育長の答弁にもあったように、まずは3校への導入の成果や課題をしっかりと見極めていただき、さらに、今後の議論につなげていかれることを期待している。

・御質問の中で触れられた高校入試の前後期試験などの課題についても、教育委員会において十分検討していただければと考えている。

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一般質問が終わった。内心、ホッとしている。蒲島知事は紳士であり、真摯に話を聴いて頂いたと感じた。

60分の質問に全精力を傾注すれば、すべての議員が耳を澄ませる。アドリブを効かせる術には長けておらず、笑いなんかも取れないが、これが今の濱田のスタイルだと思う。

質問に際して、アドバイスを頂いた県職員、第三セクターの皆様、お越しくださった支持者の皆様、すべての関係者に感謝します。

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